ラジオ英会話 Advent Calendar 2022参加作品。
- 「ロッキー」(Rocky)
- 1976年アメリカ制作
- 監督:ジョン・G・アヴィルドセン
- 出演:シルヴェスター・スタローン、タリア・シャイアなど
知らない人はいないと思うが概要を説明すると、ロッキーはうだつの上がらないボクサーだが、突然、世界チャンピオンから挑戦を受ける。最初は怖気づいて断わるが、「もし試合が終わっても立っていられたら、自分がただのチンピラじゃないことを証明できるような気がする」と、試合に臨む決意をし、これまでにない猛特訓を始める……という話。
前半はロッキーがやぐされているところをこれでもかと映し出す。トレーナーから、お前は才能がある、真剣に練習すれば一流になれると言われるのに真面目に練習しない。ボクシングのファイトマネーでは生活できないから、借金の取り立てで小遣い稼ぎをするが、こちらも相手に追い込みがかけられない。要は、すべてに中途半端なのだ。
ところが、チャンピオンとの試合を決意してからはがらりと変わる。「ロッキーのテーマ」を聞くとやる気が出る、勉強や仕事を始める前にこの曲を聴く、という人は多いのではないだろうか? 初めて見たのは学生時代。その後も何度も見たが、何度見ても元気づけられる作品だ。
さて、本作にはロッキーのラブ・ストーリーも絡む。ロッキーはペットショップに勤めるエイドリアンが好きで、用もないのに店を覗いてはあれこれ話しかけるのだが、エイドリアンはロッキーのことをただのチンピラだと思っており、見向きもしない。
その日もペットショップに行ったロッキーは、机に向かって事務仕事をしているエイドリアンに、「僕が可愛がっていたペットが死んじゃったんだよね……」と話しかける。エイドリアンはロッキーの方を見もせず、
I'm sorry.
とつぶやく。このセリフは訳が字幕に出なかった。アイム・ソーリは聞き取れたが、なぜエイドリアンがロッキーに謝っているのだろうと、不思議で仕方がなかった。
その後、I'm sorry.には謝罪の意のほかに、「残念ながら」「お気の毒ですが」という意味があることを知る。あの時のエイドリアンは「お気の毒さま」と言ったわけか、とようやく理解できた次第だが、I'm sorry.といえば「ごめんなさい」の意識が強く、納得のいかない思いもあった。
さらにその後、NHKのラジオ講座をいろいろ聞くようになると、ダイアログの登場人物が、「残念ながら」の意味でしばしばI'm sorry.と言う。なるほどそうなのかとは思う。自分でも英語で「残念ながら」と言いたい場面は時々ある。こういう時はI'm sorry ナントカと言えばいいんだなと思うが、謝罪と誤解されたらイヤだなと思うと怖くて使えない。そうした時は Unfortunately と使うことにしていた。これなら誤解されることはない。
ところで、私は外資系の起業に勤めており、本社としばしば英語でやりとりをする。相手の方が立場が上だから、こちらはある程度へりくだった、謙虚な物言いをするのは当然と思っている。ある時、明らかに先方のミスでトラブルが起き、日本側が面倒な作業に巻き込まれたことがあった。まあ収拾はついたからいいのだけど、こういう時は、ひとこと謝れよと思うが謝らなかった。そういえばこの人たち、滅多のことでは謝らないなーと思い、ふと思いついて、ここ二年くらい、日本と本社でやり取りしたメールでsorryがどのくらい使われているか検索してみたのである。
そうしたら、たくさん引っかかってきたのだが、それはすべて日本人が本社に送ったメールだった。しかもその大部分は、メールの冒頭で次のように記しているものだった。
- I'm sorry to bother you, ...
- I'm sorry to interrupt you, but ...
- I'm sorry to rush you, but ...
「お忙しいところを済みませんが」というわけだ。お互い仕事なのだから謝ることはないと思うが、手紙の冒頭でこのような一言を入れたい気持ちはわからなくもない。それはともかく、本社から日本へのメールにはsorryは全く使われていなかった。
結論。そもそも彼らは謝らない。そして日本人は謝り過ぎだ。