名著への招待 第29回(8月号)
この話は、物心ついた時から大人になってまで、一体何度読んだだろうか。子ども向けの物語として紹介されることが多いが、子供にも読めるけれど大人の鑑賞にも耐え得る内容だ。
この話に惹きつけられるのは、きれいごとで終わらないからである。鴻巣氏の指摘にもあるが、王子は南の国へ行きたいという燕の声に耳を傾けることなく手伝いを命じる。もちろん、燕は王子の声を無視して飛び立って行ってもいい。でも、それができなかった理由もわかる。その帰結として、冬が来て燕は死に、燕の死を知った王子の心臓は壊れる。なんとも無慈悲だ。そこがいい。
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