恐れず侮らず

英語の勉強を始めましょう

配分単数(distributive singular)と配分複数(distributive plural)

主語が複数形のとき、動詞の目的語を単数形にすべきか複数形にすべきか迷うことがある。

どちらでもいい場合

「私たちは鼻で匂いをかぎます」と英語で言う場合、次のどちらが正しいのか?

  • We smell with our nose.
  • We smell with our noses.

前者の表現を「配分単数」といい、後者を「配分複数」という。前者はみんなでひとつの鼻を共有しているような感じもするし、後者では人間が複数の鼻を持っているようでもあるが、「各人が鼻をひとつ持っている」という常識から、どちらでも誤解されることはほぼないと考えられる。従って「どちらでもアリ」。なお「英文法解説」では一般的傾向として複数が使われるとしており、「現代英文法講義」では単数のみ例文を挙げている(偉い先生の間で見解が分かれているということは、われわれ学習者にとっては「どちらでもいい」という意味である)。

誤解されたくない場合

「彼らは携帯電話を持っている」という場合はどうであろうか?

  • They have a mobile phone.
  • They have mobile phones.

この場合は「一台の携帯電話を共有している」可能性も「一人で複数台の携帯を持っている」可能性も考えられる。厳密さが要求される場面でなければ、どちらでもよいが、誤解の余地のないように言いたい時は、「一人一台」ならば Each of them has a mobile phone. 「一台を共有」ならば They are sharing a mobile phone. のようにするとよい。

配分単数が望ましいとされる例

次のような場合は、曖昧さを避けるため、配分単数を用いるのがよいとされる。

  • Boys and girls, bring a red pencil to class next time. (皆さん、今度の授業には〔めいめいが一本の〕赤鉛筆を持って来なさい)〔英文法解説〕
  • Children must be accompanied by a parent. (子どもは片親の〔両親揃ってではなくどちらかの〕付き添いがなければならない)〔現代英文法講義〕

「ラジオ英会話」では

「ラジオ英会話」Lesson 105において、「すべての応募者の中から選ぶのはとても大変だったけど、この3人はどうだろう? 皆さん十分資格があるし、素晴らしい職歴をお持ちだし。彼らとの面接を設定することにしよう」の表現例として、次の英文が挙げられていた。

It was very difficult to choose among all applicants, but how about these three? They are all well-qualified and have a great work history too. Let's set up an interview with them.

後半の "They are all well-qualified and have a great work history too. Let's set up an interview with them." において、主語が複数なのになぜhistoryやinterviewが単数なのか疑問に感じた(twitterで質問し、貴重なアドバイスをいただいてようやく「配分単数」の概念に行き着くことができた。名前は出さないが、教えて下さった方、ありがとうございます)。

調査結果を踏まえて考えるならば、一人がひとつの職歴を持っているのは当然なので、配分単数で問題なし(複数でも間違いではないだろうが)。ただinterviewに関しては、これでは三人のapplicantと個別に面接を行なうのか、三人まとめて一回で済ませるのかがわからない。人事部内の打ち合わせならこの表現は避けるべきだろうが、部外者の同僚との世間話のようだから、そこまで厳密な言い方はしなかった、ということだろう。



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