恐れず侮らず

英語の勉強を始めましょう

生まれて初めて見た洋画「卒業」

ラジオ英会話 Advent Calendar 2022参加作品。

高校一年生の時に近くの名画座リバイバル上映していた。なぜ突然この映画を見ようと思ったのかはもう覚えていないが、いいものを見たと思う。恐らく生まれて初めて見た洋画で、字幕を選択したのは正解だったが、字幕しかなかったのかも知れない。

この映画を見て何と言っても興奮したのは「英語が聞き取れた」ことだった。

冒頭で、陽気なパーティーとは裏腹に、独り暗い顔をしている主人公のベンに、客が "Hey, what's the matter?" と声をかける。あっ、あっ、今、ホワッツ・ザ・マターって言った! 意味がわかる! と、ものすごく感動したのだ。

聞き取れたのはここだけで、たった三語の短い文章だが、それでも、ナチュラルスピードの英語の文章が自分に聞き取れたというのは今でも覚えているくらい嬉しいものだった。

ちなみに本作は、アカデミー賞も受賞した著名な作品だが、恐らくは次の三点が今に語り継がれているところだろう。

その1、妖艶な人妻が若い男の子を誘惑するシーン。ミセス・ロビンソンアン・バンクロフト)がパーティー会場から自宅までベン(ダスティン・ホフマン)に送らせ、ドレスの着替えを手伝えと言って「背中のファスナーをおろして」と言うのだ。男性を誘惑するシーンの定番となった。弓月光の「エリート狂走曲」にもそのパロディシーンがある。

その2、エレイン(キャサリン・ロス)の結婚式にベンが乱入し、花嫁を強奪するシーン。非常に印象的なシーンで、多くの映画・ドラマ・漫画作品などに類似のシーンがあふれることになる。ベンは結婚式を滅茶苦茶にしたひどい男なのだが、のちにテレビの地上波で放映された時、それを見たクラスの女の子が「私もあんな風に奪われたい」と言っていて、そういうものかと驚いた。

その3、サイモン&ガーファンクルの曲がふんだんに使われていること。「サウンド・オブ・サイレンス」以外にも「スカボロ・フェア」「四月になれば彼女は」「プレジャー・マシーン」など。音楽を聴くためだけでも映画館に行く価値はある。映画のサウンド・トラック・アルバム「卒業」は全米一位を獲得。サイモン&ガーファンクルの名を世界的なものにした。

ミセス・ロビンソンがベンに手を出したのは、からかってやれと思ったのか、女を教えて自信をつけさせようと思ったのかはわからないが、罪なことをしたもの。娘・エレインの結婚相手からは損害賠償を請求されるだろうし、結婚式をぶち壊しにされた遠因が自分の浮気にあるとわかれば離婚は避けられないだろう。エレインも家には帰れないから一家離散。頼みのベンは無職。ベンの父親は裕福だが、事業のパートナーであるミスター・ロビンソンを怒らせたら、それもどうなるか。まあ悲惨な話だと思うが、肝はそこじゃない。

ベンは、大学時代にこれをやりたい、卒業したらこれをやりたい、というような夢や目標が何もなく、ただただ言われるままに怠惰に日々を過ごしてきた(勉強は真面目にやったのだろうが、主体的に取り組んでいなかった)。だから一流大学の卒業証書は手にしたものの、何の達成感もなく、空しい日々を過ごすことになる。この空虚さ、焦燥感が実によく描かれていた。そしてそこに「スカボロ・フェア」「四月になれば彼女は」などのS&Gの曲はよく合った。そこが共感を呼んだのではないだろうか。


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