恐れず侮らず

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「雪女」は基本的にはホラーなんだと思う。風吹の夜、雪女が山小屋にやってきて茂吉を殺し、巳之吉に手をかけようとするシーンは怖いところである。また、からくも難を逃れ、それから十数年経って恐怖の記憶も薄らぎ、妻子を得て安らかに暮らしている巳之吉の前に再び雪女が現われるのも、恐怖が増幅されるだろう。最初は人智の及ばぬ魔界の力に対する恐怖。二度目は意外性の恐怖。この二段構成になっているからこそ、物語としても質の高いものになっている。

しかし、冷静に筋を追っていると、雪女の行動は少々妙である。巳之吉と結婚したのは、彼が秘密を漏らさないかどうか監視するためと思われるが、その目的のために人間に姿を変え、結婚して子まで成すのはかなり突飛だし、巳之吉が約束を破った時に、彼に手をかけず自分が姿を消すのも妙である。そもそも巳之吉が話をした相手は雪女自身だったわけで、秘密が外へ漏れたわけではない。巳之吉は雪女と思って話をしたわけではないから、約束を破ったには違いないのだが、咎められるべき行為だったのか。

もしかしたら、吹雪の夜に彼女が巳之吉を殺すのをためらったのは、彼が若いことに同情したからではなく、彼に一目惚れしたからではないのか。それなら、彼のところへ嫁いできたのもわかる。そして10年ぐらい人間としての生活を味わってみたけれど、巳之吉の容姿はどんどん衰えるし、正体を隠しての生活もいい加減うんざりしてきたから、彼が秘密を漏らした時に、人間界から姿を消す「いい口実が出来た」と考えたのではないだろうか。